
V40SEを修理に出す前にせっかくなのでENERGYとの比較試聴をしてみました。同じドイツ製、ハイエンドメーカーのエントリーライン、ほぼ同じお値段ということで面白いと思います。ただスピーカーのクレモナは少々色が強いので、あくまでも個人の主観と思っていただきたく。。。
※V40SEはBLACK BOXは外しています。
試聴機Digital Player MAGIK-DS
Speaker Sonus faber CREMONA
DAC CEC DA53-N
試聴CDバッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)
Glenn Gould
The Well
Jennifer Warns
Unplugged
Elic Clapton
RBSOニューイヤーコンサート2004 モスクワ~ロシアより愛をこめて
西本智実
A Bobino 1967
Barbara
スペックTrigon ENERGY・最大出力 100W x 2 (4Ω)
・入力端子 RCA 入力x 6、XLR 入力x 1
・出力端子 スピーカーx 1、プリアンプ(RCA) x 1(又は設定により、録音機用固定出力x 1)、 ヘッドフォン(6.3mmφ標準プラグ) x 1
・サイズ w440 x h85 x d350mm
・重量 10kg
・付属品 リモコン(Director)、電源ケーブル
Octave V40SE・出力管 40W + 40W(EL34/6L6):50W + 50W(KT88/6550)
・ドライバー管 ECC83 / 位相シフタECC88 / 6922
・アンプ部
・最大出力 40W + 40W
・入力 ラインレベル(RCA フォノ) x 5 系統 (フロントチャンネル[バイパス]入力を含む)
・出力 テープアウト(RCA フォノ) x 1 系統 プリアウト(RCA フォノ) x 1 系統
・その他 Black Box / Super Black Box 接続端子
・サイズ 410W x 160H x 418D (mm)※ノブ・端子・グリル含む
・重量 17kg
・付属品 リモコン(ボリューム専用)、電源ケーブル
パワーに問題はありません。ただOCTAVEの真空管でありながら40W×2を絞り出しているのには驚きます。いずれもプリ部をパススルーできますので、AVアンプとの併用や、セパレートへのステップアップには便利です。
サイズは横幅でEnergyが440ミリありますから、一般オーディオ製品の平均的なそれです、一方OV40SEは410ミリ(実測400ミリ)ですので380ミリのMAJIK-DSとの組み合わせではとてもバランスが良い。重さも国産アンプほどではなく、使い勝手は良さそうです。
リモコンは表示が複雑ですが、多機能のENERGY、対してボリュームだけのV40SE。
デザイン好き嫌いが別れるかもしれません。シンプルなENERGYに対して、スマートにコンパクトに仕上げたとはいえやや無骨な感じのV40SE。真空管のカバーを外すと一気にしゃれた感じになりますが、そうする人は少ないでしょう。いずれにしても私は個人的にシルバー色が好きなのでその部分ではどちらもありです。
試聴バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)
Glenn Gould
両機とも良くコロコロとピアノが弾みます。タッチの強さはV40SE、まろやかなENERGY、グールドの鼻歌のリアリティはV40SE、奥行きはわずかにENERGY。
The Well
Jennifer Warns
このSACDもう廃盤なんですね、オーディオショップの試聴では定番で優秀録音版。特に6曲目のAnd So It Goesの出だしのピアノ、ボーカルの定位のチェック。7曲目The Pantherの出だしの細やかな音の広がりをチェックするのに最適です。ただわかりやすい良い音なので、何でも良い音に聞こえてしまうところが玉に傷でしょうか。。私がチェックするのはボーカルの定位。特に低く落ち着くかがポイントです。
Energyは高い。口もとがわずかに曖昧。ただ、広がりはやはり優れていて、スピーカの存在感をかなり薄めます。V40SEは口元はど真ん中に定位し、唇の形もわかるほどです。音の広がりも全く問題ありません。
Unplugged
Elic Clapton
1、2曲目を通して聞きます。ギターの弦の耳に痛いくらいの弾け方がポイントでしょうか。
Energyは意外とおとなしい。音が柔らかいんです、滑らかとも言いましょうか。一般的には真空管の方がそう言われがちですが全く逆です。V40SEはまさにギターです。ギターを弾く人ならお分かりでしょうが、張り替えたばかりのあの弦の新鮮かつ荒々しさ。これはV40SEに軍配が上がります。ただ低音が出過ぎて少しブーミーな感じに鳴りましょうか。ENERGYの方が抑え気味でバランスは好ましいです。スピーカーで印象は変わるとは思いますが。
RBSOニューイヤーコンサート2004 モスクワ~ロシアより愛をこめて
西本智実
ここは4曲目のバレエ音楽「ガイーヌ」~レズギンカ(ハチャトゥリャン)を聞きます。映画の活劇シーンをイメージさせる勇ましさは、パーカッションや金管楽器も体力勝負だということを思い知らされますし、その熱を感じられるかどうかがポイントです。
V40SEはなかなか強い音、ド迫力です。トランペットの入りも見事で全く不安を感じさせません。Energyはこういうホールの雰囲気を出すのはとても得意なアンプだと思います。ホール二階席の最前列で俯瞰している感じで何とも見通しの良い音。低音の量感に関係するのでしょうか。夜中にオーケストラを聴くならお薦めです。
A Bobino 1967
Barbara
このCDは最近AV評論家となりつつある音楽プロデューサーの和田博己さんのレファレンスディスクです。古いシャンソンですが、素晴らしいライブ録音で、ボビノ座という当時の小さな劇場の猥雑な空気も含めてパッケージされています。彼女の鼻に詰まるハスキーボイス、小編成バンド、会場の酒とタバコの雰囲気がどれだけ再現できるかがポイントでしょう。
Energy、ひずみ無く滑らかなシャンソン。バルバラの声はおそらく当時のマイクのせいもあるかもしれませんが、少し高音域が歪みます。それが味わいなんですがEnergyは何とも美しくなめしてくれます。V40SEはこういう録音は強いですね。少し雑な感じで聞かせますが、これは元々の録音ではないかと思ってしまいます。会場の紫煙とアルコール、人いきれ。実に雰囲気を醸し出します。
総括聞き流している分にはどちらも心地よいアンプです。ただ低音の質、量に差は確かにあり、それが音全体の印象を変えていますが、どちらを選んでも後は音楽を楽しむことに集中できるようになるでしょう。
それにしても驚きます。真空管の良さを残しながら最新技術で音を磨き上げた現代真空管アンプ。トランジスターアンプと比較しても何ら変わりありません。残留ノイズも低音の緩さも感じません。
トランジスター、デジタル、真空管と確かに音色にそれぞれ特色があります。それをメカニズム的優劣ではなく音質、嗜好で選択できる時代だということでしょう。
※私はV40SEのオーナーなので、そもそも好意的に聞いてしまうところがあると思います。もし拙文をご参考になさる場合にはそこを割り引いてくださいませ。。。
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